「あたし猿飛のこと好きみたい」








ってどこで何言ってんの私のバカヤロォオオオォォォオオォウ!!!!間違ってもこれは今言うセリフじゃない!!セリフじゃない!!

















SEISHUNromantica


















昨日幼馴染みのあたしと猿飛と幸ちゃんはとまりこみで朝まで幸ちゃんの家で新作のゲームをしてた。朝までってなるとまあ勿論宿題をやることばかりか存在さえも徹夜とゲームでハイになったあたしたちの脳からは消えうせていて。あたしと幸ちゃんは仲良く近い席でぐっすり一時間目から六時間目まで寝ほうけていたわけだ(猿飛も近くの席で寝てたくせに見つからなかったなんて!!)(あいつ人が近づくと起きんのよね)(なんかセンサーでも内蔵されてんのかしら)


それであたしと猿飛は宿題をその場しのぎでかたづけていたわけなんだけれど、バカな幸ちゃんは勿論の事宿題なんて一文字も書いてなくて。それ(居眠り+宿題忘れ)に怒った武田先生が、たまたま居眠りの罪のみ(ここ重要!!)で呼び出しくらったあたしも巻き添えにしてトイレ掃除を言いつけたんだ!!


もー幸ちゃんのせいなんだからね!!罰として幸ちゃんは女子便掃除!!あたしは男子トイレ!!と言ったら幸ちゃんは顔を真っ赤っかっかにして(どこにそんな要素があるんだ!!とは思ってはいけない、幸ちゃんはクラス一の純情チェリーボーイなのだ!!)むむむむムリでござる!!し、しかもも男子トイレを掃除するなど誰か入ってきたら・・!!なんていうもんだからとりあえず早く帰って続きをしたい(だってもうすこしでボス戦なのよ?!)あたしは幸ちゃんの顔に雑巾を投げつけて、あたしは猿飛に手伝ってもらうの!!と叫んで、ねえ猿飛?!と後ろにいた猿飛を振り返った。








それが、そもそものまちがい。








そうだよわたしも振り返って「ねえ猿飛?!」って言った瞬間しまったァァアアアァァアァ!!って思ったわよ!私の阿呆!!阿呆!!!!気まずくなる事請け合いじゃない!!絶賛無言トイレ掃除じゃない!!(一人でも無言だけどでも二人だと無言に『気まずさ』というおつりがついてかえってくんのよ!!)トイレ掃除なんて断るわよねねえ佐助・・じゃなかった猿飛!!ね!!さあ嫌と言え、嫌と、言え!!!!と送った念も虚しく「俺様??いーぜ」とか言った猿飛も同罪だコンチクショウ!!!!

















言っちまった事はしょうがねえ、漢、(ことわっておくけどあたしは女だ、ミニスカから覗く太ももの眩しいピチピチ女子高生だ!!)、ブッ込んでいきます!!てなわけで絶賛無言トイレ掃除中だったんですよ!!三人だと普通に猿飛とも喋れるのに二人だといやに気まずい。いや、理由はわかってる。でも認めたくないんだ!!呼び方が佐助から猿飛にかわったのもそれだ。ある日急に呼び名を変えたんだから(バカな幸ちゃんはともかくとして)猿飛は気づいたはずだしこう、なんていうの、ツッこんでくれたらあたしも素直に元に戻せたんだけどスルーされました。はい。ひっこみつかなくなったんです。すいません。


もーとりあえず喋る事もなくなって、そろそろ私の豊富な話題の貯蔵庫も尽き果てて、シャカシャカというブラシの音が男子トイレに響くだけになって。だって恐いじゃん?!なんで不真面目二人組が真面目に便器磨かにゃならんのだ!!アホか!!と思ったわたしは、言ってしまったんです。(説明終わり!!ながかった・・)

















いや
言うぐらいなら
絶賛無言トイレ掃除祭りを
続けた方が
遥かに
マシだったんですけどもね・・・・








いや今ならマシかもしれん!!もしかしたらこの空間だけ音の伝わるスピードが5センチメートル毎分だったかもしれん!!今からでも遅くない!!ブラシを、シャカシャカして、さっきの、私の言葉を、かき消すんだ!!

















「・・








かき消せなかったみたいですねー・・・

















、」
ビクッと身体が揺れてしまった。予想以上に私は動揺しているのかもしれない。幸ちゃんばりに顔が赤くなってくるのが分かる。
「・・はい」
後ろ向きのままで返事をしたけれど、猿飛はそれについて何も言わなかった。(いつのまにかブラシの音が消えていた)(やめてよ声がよく響くじゃない!!)









「俺のこと、『好きみたい』なの?」
「・・・うん」
「それって、まだ好きじゃないってこと?」
「わかんない」(うそばっかり)(うそばっかり!!)

















「じゃあ、どうしたら好きになってくれんのさ」

















私が振り向いてしまったのがいけなかった。だって私の視界に入った猿飛は、耳が、まっかっかで








「・・・さ、るとび」
「ねえ、どうやったらおれのことすきになってくれんだよ」よびかたもさ、
猿飛の手から逃れたブラシが重力に引き寄せられて、カランと小気味良い音を立てる。(猿飛・・ううん、佐助の泣きそうな顔を見るのはものすごく久しい気がした)






「佐助」
「・・なに」(よ、よびかた)
「ごめん、あたし嘘ついた」











「佐助のこと、好き。しぬほど、すき。」





























もうそれからはふたりしてまっかっかっかっかっかになって、トイレ掃除を終えた幸村が男子トイレの私達を覗きに来て「終わったでござるか?」と気の抜けたことを言うまでがっちがっちでトイレに立ち尽くしていた。
(なにやってんだあたし!!)
2007/01/01