「よう」
一番聞きたくなくてそれでいてやっぱり聞きたかった声がドアの裏側からして、私はベッドに寝転んだまま首だけをドアのほうに向けた。
「生きちょるかー」
「生きてるよ」
「入ってええんかの」
「だめです、つか、いやです」
「・・・アイス買ってきちゃんじゃけんど」
「どうぞお入りくださいませ、仁王サマ」
ドアノブが四十五度右下に傾いて、開いた。仁王の姿になど目もくれず、右手に揺れる白いビニール袋に視線を注ぐ私に「相変わらずやのう」と仁王は呆れたように半ば面白そうに言った。

















「なー」
「ん、なに」
「(話聞く時はアイスやのうて相手の顔をみるもんじゃき・・)・・・おまん、またやらかしよったろ」
「ううん、仁王の気のせいだよ」
「(なんでじゃ・・)・・あのな、もちっとこう、上手く生きようとは思わんの?」








つまりは仁王はこう言いたいのだ。私と仁王がいつもつるんでいるために=気に食わない女だと周りの女子から認識され、(実際は仁王が私に付きまとっているだけで、)(私はそれをひっぺがすために労力を使うくらいなら、この隣に居る男の存在を無視してのんびりと読書をしたり散歩をしたりすることに労力をかけるほうが有意義だと思っているだけの話で、)(それが気に食わないのだといわれればそれまでのことなのだけど、)ことあるごとに呼び出されて私の周りを取り囲んではぐちぐちと文句や皮肉を言い、嘲笑する女たちの輪の中で一人、聞いているふりもせずに今日のごはんはなんだろうとか、そういえば昨日は脳のトレーニングゲームやるの忘れたなとか、そういうことを考えて、文句一つ言わない私が不憫だと、気に食わないと言いたいわけだ。















「思わんですね」
「・・・」
「てか、仁王のせいだし」
「・・おん」
「女の子みんなアンタのこと好きなのに、アンタが・・ホラ、あー・・」
のこと好き好きいいよるからか」
「・・んあ、そう、そうです」
「だって好きじゃけん、しょうがないけえ。さえ俺んこと好きって認めたら
「好きじゃないです、」
・・・・・あ、そう」
「のらりくらりして、揉め事とか避けて、ヘラヘラ笑ってる仁王なんて私は大嫌いですー」
「俺は正面からぶつかってって、他人の揉め事も引き受けて、一人で歯ァ食いしばってるが好きやけんど」
「・・・・・」
「なあ、」
「ん」
「キスしょう」



















顔に好きって書いとるけん、せやないと俺がこんな気になるわけないじゃろう、なんて油断も好きも・・じゃなかった、隙もあったもんじゃない。







「好きよ好きよも好きのうち、ってな」
(うーん、なんだか違う気がするのだけれど)
(唇を塞がれちゃあ文句も言えない)            (ということにしておこう)










06'08'31 名前変換テキスト企画、夢味サイダーさん (ごめいわくおかけしました)