「阿部くん、すきです!」








阿部くんはそれはそれはものっすごいげーんなりした表情をして、(あら、心なしか瞼にはクマ。)あたしを見て、そんではぁーってふっかいため息ついてくるっとあたしに背を向けて無言で去っていこうとする。えー!ちょ、ちょっとそれは失礼じゃないかね阿部くん!がんばって思いを伝えるおんなのこにそれは失礼じゃないかね!


「ちょ、ちょっとー!」
慌てて行く手を阻んだら、ああ、またふっかいふっかいため息。(エエーそれはいくらなんでもね、傷つくんですけどね。まあいいけどね。慣れてるからね。)あたしはとりあえず「そこは理由とか聞こうよ!会話はキャッチボールで成り立ってるんだよ!これじゃあたし阿部くんに向かって投げてるだけじゃん!キャッチボールじゃなくてスローボールじゃん!」「・・じゃあお前のボールはものすごいノーコンなんだな」




ええーそれでも追って捕るのがキャッチャーてもんでしょうよ!キャッチャーフライを追って追って捕るのがキャッチャーの醍醐味なんでしょうよ!(byとなりの席の田島くん)
「あたしの投げるボールはキャッチャー目掛けていっつも剛速球っすよ・・ああ!待って!待って!」
追いすがるあたしを見向きもせず阿部くんはさっさと廊下を歩いていってしまった。ちくしょう・・涙が目に染みるぜ・・
















「その様子だとまーたフられたろ」


うぐ、う。時速200キロの剛剛剛速球(っていうか言葉のナイフ)を繊細な心にくらったせいでやきそばパンを喉に詰まらせたあたしは涙目になりながら机をばんばん叩く。その様子を敏感に察知した浜田が「うお、飲め、早く飲め」と机をバンバンやるあたしの手にペットボトルを押し付けてくる。ぐいっと飲んだら、食道気管もろとも(わかんないけど)塞いでた憎き(おいしいけど)やきそばパンは胃の中へ収まってくれた。ありがとう、浜田・・・あんたはあたしの命の恩人だ・・
そんであたしはガラスよりも繊細な心を傷つけた張本人をき、と睨む。「うっさい!泉!」「だってほんとだろ?」通算何回目だよ。よくやるなあ、と泉は笑う。「38度目」って大真面目に言うと、「・・俺その回数に驚けばいいか数えてる事に驚けばいいかわからなくなってきた」となんだか哀れみの視線を頂きました。そんなもんはいらん!












「で、どこがいいんだよあんなやつ」泉の言葉に浜田も「あっ俺もそれ気になるわ」と食いついてきた。 「えーべっつにー・・」あたしが言うと泉は「別にとか、なんだそれ」なんであんなやつすきなわけ。こ、こやつ・・!すこしモテるからってあたしの王子様にケチつけやがって・・「阿部に王子様はおかしい。それは絶対におかしい」真顔で手を横に振られた。畜生・・!








「てゆーか、そんなに振られてんなら脈ないんじゃねえのお前」
泉のきっつい言葉はあたしにぐさぐさささる。そ、そんなこと改めて言われなくてもわかってるやい!
「へーへーそうですかそうですか」
くっ・・なぐってやりたい!なぐっちゃりたい!でも殴ったら確実におこるしな!あたし殺されるしな!なんではこんな奴すきでつきあってんだろ・・!




「えー?それ違くね?」
「あ、クソレフトくんだ」
急に背後から会話に参戦してきた人影に思い当たったのでそのまんま口にすると泉が飲んでた紙パックのコーヒー牛乳をぶはっと吐き出した。うわ、きちゃない!
「エ、エエー・・俺傷つくんだけど・・!」そんな悲痛な叫びも無視して泉はヒーヒー笑いながらむせている。あれ、コレって笑った泉が失礼なんだよね?あたしが失礼じゃないんだよね?「ちがくねって何が?」浜ちゃんがクソレフトくん(名前知りません)(でも阿部くんがくそれふとっていってたしな!)(あべくんはあたしのってか世界の法律だからな!)に聞く。












「阿部くーん!」
あたしが大声で呼びかけると阿部くんはまたきた、みたいな顔してため息を吐いた。うっやっぱ傷つくなあ!
「あたしのこと、きらいじゃないならいつかすきになってね!」
ここは廊下で、人もいっぱいいるけどあたしは気にせずさけぶ。だって思い伝えるのに障害もくそもあるもんか。ものすごいみんなぽかーん、って顔してあたしと阿部くんを交互に見る。阿部くんの顔は、まっかだ。
「あたしいつまでもまってるから!いつまでもまってるからー!」きんむぎひやしてまってるからー!みたいなノリで叫んだら阿部くんが「あーもううっせえ!」って走って逃げてしまった。「阿部くーん!」走って追いかけたら「ついてくんなー!」だって。あれ、これって恋人同士のおいかけっこみたい!「ついていきます!いっしょうついていきますー!」












「あーあ、お前いらんこというなよ水谷」
「え、ええー?俺の所為?!」
「ははー、まあ『阿部はその気がなかったらその場でばっさりフる』」だなんてには火に油ってか鬼に金棒ってか」
「えーいいじゃん。阿部もまんざらじゃないんだし二人して幸せそうで」
「・・あんなのウゼえ以外の何モンでもねえだろ今まででもさんざ惚気てきやがるんだぞ・・アアもう俺明日から耐えられねえ」
「まーたそんなこといって泉お前もホッとしてるくせにー素直じゃねえんだから!」
「ッハアー?!うっせーよ浜田死ね!」
「っちょっ死ねとか酷くね?!」




2007/10/02

Be ambitious! :-)