白いゴールテープが俺を過ぎて行って、同時にパアン、と破裂音。ゴールテープを切った後も俺はトラックをゆっくり減速しながら走る。わああ、と歓声を上げるクラスの方へ手を振って、タンタンタンタン、赤いタータンの上で弾む足はまだまだ軽い。少し上がった息は、また少しすると元に戻った。ゆっくりとそのリズムを落として、そして足をゆっくりととめる。きょろきょろしていたら「一着はあっちだぞー」多分先輩だろう係の人が俺に声をかけたので、俺はあざっす、と言って軽く会釈して先輩が指差した方へ向かった。











「榛名ー」
前方で手を振る人が見える。「、」上気した頬が赤くて、うっすら汗をかいている。まだあまり整えられていない息では言った。「おつかれ!」「おう、もおつかれ」


列に並びながら、は言った。「やっぱすごいね榛名は!あたし全然差縮められなかったしバトンパスももう左か右かわかんないくらいだったのに榛名にパスした途端に、あんなに差開いてたのにヨユーで追いついてヨユーで抜かしちゃうんだもん、すごいよ」ほんとすごい、何故だかこんなにも過剰なまでに繰り返されるのにお世辞の影も見えないその言葉に俺はだんだん気恥ずかしくなる。「いや褒めすぎだろ」「褒めたりないくらいだってば!あの人サッカー部のキャプテンなんだよ?ほんっとすごいよ榛名ほんっとすごい」きらきら、って感じで目を輝かせて笑うに俺はやっぱり毎度の事ながら(可愛い)と思ってしまうのだ。



選手退場。アナウンスが聞こえて軽快なありきたりな音楽と共に列が駆け足で退場門まで進みだす。も俺も慌てて列に並びなおす。「すごいなー・・すごいなー・・」まだ言ってるし。本格的に恥ずかしくなってきた俺はもう痒くなってきた体を抑えてにやと笑いながら言ってやった。











「もしかして惚れちゃったりした?」











は振り向いた。その顔は俺が予想してたような焦ったりうろたえたりするような顔じゃなかったので俺はちょっと面食らう。はさっきの上気した頬とか幼さの残った笑顔なんて、もう嘘のようでなんだか大人の顔、で微笑んだ。











「元からね」
「え、」









2007/09/21