ちゅーちゅーちゅぶりらちゅぶりららー♪








「超時期外れ。」
頭上から声が降ってきたので見上げたら慎吾だった。、みたいな顔してはあっけからんと「おっすー、帰り?」と片手を挙げる。
「おっす、うん、帰り。いっしょに帰ろ」
「いいともー」












ちゅーちゅーちゅぶりらちゅぶりららー♪








さーん」
「なんですか慎吾さーん」
「ものすごい時期外れな気がするのは俺だけですかさん」
「あたしも同意見です慎吾さん」
「じゃあ恥ずかしいので大声で歌うのをやめてくれませんかさん」
「やなこったです慎吾さん」
「小学生みたいですよ頭も小学生なみのさ、うっ!!
「じゃあパピコおごってください頭がえろおやじなみの慎吾さん」
「(ひ、ひじてつ・・!)・・は、はいはい・・」












ウイーン、と自動ドアが開く。はアイスには目もくれず早速雑誌の棚に行ってジャンプを手にとって読み始めた。おいおいパピコ欲しいんじゃないのかよ・・彼氏ひとりぽっちにさすきですか。とはもういわない。これってものすごい虚しいことだと思うけど、もう慣れた。アイスを先に買っても溶けるだけだ、と判断した俺はの隣に行ってよくわからんメンズ雑誌開いてぱらぱらやる。はジャンプに興奮しておおう、とか、ふおお、とか奇声をしかも小声で発し始めた。(エエーちょっと怪しいんですけど恥ずかしいんですけどうんまあ慣れたけど普通に)






「おーい変な声出て、 「うるさいじゃますんな」
「(・・ですよねー)・・・」












ちゅーちゅーちゅぶりらちゅぶりららー♪








歩道と車道の区切りの、ちょっと高くなってるブロックみたいなのの上をはぱぴこのうた、を歌いながら、まるで空でもとんでるみたいに歩く。楽しそうで何よりなのだけどこれってまあぶっちゃけ小学生とかがすることでしかもはそう背も低くないのでハタから見れば目立つわけである。それだけならまだしも車がくるたびに少しひやっとするので強引に腕を引っ張っておろさせたらジト目で睨まれた。痛い痛い。視線が痛い。
















「野球したい?」
「・・え、?」
「野球したいか、ってきいてんの」




字ヅラだけみたらものすごくきっついその言葉を、何でもないみたいにあっけからんというに俺はぽかん、とする。




「・・したい、ですねえ、ハイ」
「そっか」
「・・でも、もうできねえしな」
「そうだねえ」
「・・そこはフォローとかするとこだろ」
「でも事実じゃない」
「・・まあ・・うん・・まあねえ・・」








「いいじゃん」
「え?」
「楽しかったんでしょ?」
「・・うん、まあ」
「誰かが勝てばね、誰かが負けるんだよ。それはすっごいしょうがないことだよ」
「・・・」
「でも負けた人はいつか勝つんだよ。みーんな同じ確率で、この世界はまわってるんだよ」








くるくる、と人差し指を回す。回す、回す、回す。その動作におれはすいこまれるように、つきはなされるように








「幸せはそうやってめぐりめぐるのさー」
うーん、と伸びをしたはあ、もうパピコないや。と呟いた。
















ちゅーちゅーちゅぶりらちゅぶりららー♪












ー」
「んー?」
「それやっぱすげえ季節外れ」
「そうかなあ?慎吾にぴったり」
「どこがだよ」
「ばかっぽいとことか」
「なんだそれ」
「なんでしょうねえ」








蝉はいつからか、鳴かない。



2007/10/02